偶然
静かな時間を過ごすつもりだった。
こっそりと。
日常で溜まってしまったアレやコレやから解放されたくて
気の休まる時間がほしくて
立ち寄った。
主さまはいらっしゃることがないであろう時間帯。
30分ほど経った頃。
あら? (・・;)
足音と共に話し声。
同じ建物の中の違う場所に来られた様子。
予定していたことが滞ってしまっていて、何も出来ていない。
主に顔向けなどできるはずもなく、ササッと片付けてその場所を離れた。
行き場を失い雨の中、河原にしゃがみ込む。
川面を眺めながら、気持ちは泣きたいのに涙は出なくてウルウルするだけ。
涙も出ないのか···
などと思いながら、ただ眺めていた。
突然、電話が鳴った。
主からだった。
居たことをご存知だった。
「今どこにいる。」
『近くです。』
「手のかかる奴だな。戻ってこい。」
『はい。』
お電話いただけるなんて思いもせず、逃げるようにして出たのになぁ。
笑顔にはなれなくて、きっと曇ったまま。
どんな顔をしたらよいのだろう。
嬉しさよりも、後ろめたさ すら覚える。
なるべく明るい振りをして、車で移動してきた主に挨拶をして、乗り込む。
今日のはあまり嬉しくない偶然だなぁ。
とその時は思いながら···